
ーの人もいるが、結婚相手として見たり考えたりすると、そんな人がいないから困るよ」「神様ではないから完全な人なんかいませんよ、あなたを含めて」、「わかっている。だが僕の人生に大切なことだから、まあ慌てないよ」
そんな会話をしているころは、まだ余裕があった。年齢が重なるにつれ、「早くよい人に巡り会えますように」と祈り、彼に会うたびにお尻をたたいた。
四十歳が目前になると、さすがに不安で黙っていられなくなった。が、彼は相変わらず他人ごとのようにのんびりしている。そして返事はいつも同じである。
「お目にかなう人が現れるまで待つ」、「四十歳になっても五十歳になっても、そんな人が現れなかったらどうするの」、「仕方ないなあ運命だから」と、全く焦る様子もなくさして深刻そうでもない。
誕生日がくれば四十一歳になる。お正月に帰郷した息子は、久しく出席していない同窓会に出かけて行った。遅い帰宅が気になるころ、「ゴメン、ゴメン」と上機嫌で帰ってきた。そしていきなり、「僕、もしかしたら結婚するかもしれないよ」と言った。びっくりする私に、構わず喋りはじめた。
「会場で担任だった先生が僕の腕を引っ張って女の人の前に連れていき紹介された。それから会が終わるまでずっと彼女と話がはずみ、帰る方向も同じだったから送ってきた。だから遅くなった。彼女は、僕がいつ現れるかと待っていた人のような気がする。ファックスナンバーも教えてくれたから、これからその気で交際してみようと思う」
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